正十二面体の十二等分

・正十二面体の体積
 稜の長さが1の正十二面体の体積Vを求めることを考える。どうすればいいか。

 一番簡単なのは,正十二面体を12個の合同な正五角錐に分解して,その正五角錐の体積を12倍することだろう。正十二面体の中心と各稜を結ぶと,合同な正五角錐に12等分することができる*1正五角錐の底面は,辺長1の正五角形で,高さは正十二面体の内接円の半径に等しい。

 正五角形の面積は,次のようにして求まる。正五角形を二本の対角線で分割すると,鈍角黄金三角形2つと鋭角黄金三角形1つが得られる。鋭角黄金三角形の底辺長は1,等辺長は\phiである。*2
 よってピタゴラスの定理より,鋭角黄金三角形の高さは,\sqrt{\phi^2-(\frac{1}{2})^2}=\frac{\sqrt{4\phi+3}}{2}
 なので,鋭角二等辺三角形の面積は,\frac{\sqrt{4\phi+3}}{4}
 鈍角黄金三角形の面積は,この\phi分の1,すなわち\phi-1倍なので,正五角形の面積Sは,鋭角二等辺三角形の面積の1+2(\phi-1)=2\phi-1(=\phi+\frac{1}{\phi})=\sqrt{5}倍になる(過去エントリ参照)
 よって,正五角形の面積は,S=\frac{\sqrt{5(4\phi+3)}}{4}\simeq1.720

 正十二面体の内接球の半径r_iは,以前稜心図から求めてあった
 r_i=\frac{\phi^3}{2\sqrt{\phi+2}}\simeq1.114
 結局,正十二面体の体積は,V=\frac{12}{3}Sr_i=\frac{\sqrt{5(4\phi+3)}\phi^3}{2\sqrt{\phi+2}}\simeq7.663。すなわち,稜長1センチの正十二面体の体積は,約7.663立方センチ。稜長の等しい立方体の体積の7.663倍である。かなり大きいが,実際稜長を揃えたとき,五種の正多面体の中で正十二面体の体積がダントツに大きくなる*3

・正十二面体の爆発と爆縮
 正十二面体が爆発して12個の角錐破片が外へ飛んでいく様子を動画にしてみた→爆発.gif 直
 この逆に,もし破片が内側に飛んでいくとすると,どうなるだろうか。破片同士は干渉せずに互いにすり抜けるとする。おなじみの多面体にとてもよく似た形が現れるのだが…。分かった方はコメント下さい。質問もお気軽にどうぞ。(1/18修正)

*1:正多面体の中心と各稜を結ぶと,合同な正多角錐に分割することができる。

*2:鈍角の等辺と,鋭角の底辺の長さは1で,鈍角の底辺と,鋭角の等辺の長さは\phiである。

*3:ちなみに,稜長1の正多面体の体積は,正四面体が約0.118,立方体が1,正八面体が約0.471,正十二面体が約7.663,正二十面体が約2.182。他の四種の体積をすべて合わせても,正十二面体の半分に満たない