準結晶と菱形多面体

 今年のノーベル化学賞は,準結晶の発見者,ダニエル・シェヒトマン氏だそうです。
 準結晶については,佐藤郁郎さんの「今月のコラム」で聞きかじっていて,なんとなく知ってはいたのですが,偉大な業績だったんですね。
 佐藤さんの,5回対称性と準周期的結晶によれば,シェヒトマン氏の発見した合金の準結晶は,ペンローズタイルを3次元空間に一般化したものだそうです。ペンローズタイルは,黄金菱形六面体による非周期的な空間充填を,二次元平面に投影したもの。非周期的な平面充填形として有名です。今回のノーベル賞は,化学だけでなく,物理や幾何学とも密接なかかわりをもつ研究成果に与えられたのですね。
 菱形多面体は,高次元の立方体の三次元空間への投影になっています。菱形多面体について,いくつか記事を書いているので,そのリンクを貼っておきます。

・菱形多面体と正多面体
・菱形十二面体のCG
・菱形三十面体のCG
・菱形充填
・黄金菱形多面体
・黄金菱形六面体を積み上げる
・黄金菱形六面体を積み上げる(その2)
・菱形六十面体と大きな菱形三十面体


↑左が菱形六十面体,右が菱形三十面体

 最後の「菱形六十面体と大きな菱形三十面体」では,黄金菱形六面体を積み上げて,菱形三十面体を作っていますが,これを平面に投影するとペンローズタイルの一部が得られます。この菱形三十面体からさらに外側に黄金菱形六面体を積み上げていくことができて,しまいには空間が充填できます。これを二次元に投影すれば,完全なペンローズタイルが得られます。
 ペンローズタイルは二次元の準結晶。三次元の準結晶は,より高次元の結晶の三次元への投影になっているというわけです。