ポリドロン

ポリドロン 標準セット

ポリドロン 標準セット

 ポリドロンという多面体おもちゃを買った。前々から気になっていたのだが,ゴールデンウィークに群馬こどもの国に行って,実物を触ってみて俄然欲しくなった。辺の長さが相等しい正三角形,正方形,正五角形,正六角形のパネルがたくさんあって,辺同士がパチンとはまって稜をつくり*1,その間の二面角が自由に変わるようになっている*2。作っている最中はふにゃふにゃ変形してしまうが,最後の面をはめこんで多面体が閉じるとピタッと形が決まる。子供と一緒に遊ぶのもおもしろい。建物とか動物とかもつくれる。
 買ったのは標準セットで,正多面体はすべて作れるし,アルキメデスの立体も大半を作ることができる*3。セットには正八角形と正十角形がないので,切頂立方体と切頂十二面体,大斜方立方八面体と大斜方二十・十二面体は作れない*4。ポリドロンは80年代にイギリスで生まれた結構なロングセラー商品で,長いこと正六角形が最大のパネルだったが,最近正八角形と正十角形が発売されたらしい。これも欲しくなってしまった。

・正多面体
 順に正四面体,立方体,正八面体,正十二面体,正二十面体

・切頂多面体
 順に切頂四面体,切頂八面体,切頂二十面体

 切頂多面体は,正多面体の全頂点を一斉に対称に切ってゆき,残った面が初めて正多角形になったところで止めて,できた穴を塞いだ形。残った面はもとの二倍の辺をもつ正多角形になっており,塞いでできた面はもとの頂点に集まっていた面の数だけ辺をもつ正多角形になっている。

・準正多面体
 立方八面体と二十・十二面体

 立方八面体は,立方体又は正八面体の全頂点を一斉に対称に切ってゆき,もとの稜がなくなったところで止めて,できた穴を塞いだ形。二十・十二面体は,正十二面体又は正二十面体の全頂点を一斉に対称に切ってゆき,もとの稜がなくなったところで止めて,できた穴を塞いだ形。
 どちらも,残った面はもとと相似な正多角形で,塞いでできた面はもとの頂点に集まっていた面の数だけ辺をもつ正多角形になる。
 立方体と正八面体,正十二面体と正二十面体は,それぞれ双対の関係にあり,立方八面体と二十・十二面体はこれら双対正多面体同士のあいのこである。立方八面体は立方体と正八面体の中間形態なので,立方体と正八面体のどちらから出発しても同様の手続きで立方八面体が得られる。二十・十二面体も同様だ。

・その他のアルキメデス立体
 順に斜方立方八面体,斜方二十・十二面体,ねじれ立方体,ねじれ二十・十二面体

 斜方立方八面体,斜方二十・十二面体は,それぞれ立方体,正十二面体の稜をすべて切り開いて,切り離された面を正方形でつなぎ,残った穴を正三角形で塞いだ形。これは立方体や正十二面体をもとにした説明だが,当然,斜方立方八面体,斜方二十・十二面体との関係で,立方体や正十二面体が正八面体や正二十面体よりも優越するわけではない。正八面体や正二十面体から出発しても同様の説明がなりたつ。すなわち,斜方立方八面体は,正八面体の稜をすべて切り開いて,切り離された面を正方形でつなぎ,残った穴を正方形で塞いだ形であり,斜方二十・十二面体は,正二十面体の稜をすべて切り開いて,切り離された面を正方形でつなぎ,残った穴を正五角形で塞いだ形である。
 ねじれ立方体,ねじれ二十・十二面体は,それぞれ立方体,正十二面体の稜をすべて切り開き,切り離された面を,正三角形を連ねた帯でつないだ形。この二つは,鏡に映す変換をすると,もとのものとは重ならなくなるキラルな多面体である。

・ミラーの立体
 ミラーの立体と斜方立方八面体を順に並べる。

 ミラーの立体は,斜方立方八面体を,八本の稜が正八角形をつくっている平面で切り,互いに45度回して再びくっつけた形。写真では下側略三分の一を回している。面数,稜数,頂点数だけでなく,頂点まわりの面の配置も斜方立方八面体と同じ*5。ただ,各頂点が同等でなく,対称性が低いため半正多面体には含まれない。1930年にミラーが発見。

*1:こどもの国のやつは,関節がすり減っていてあまりパチンとせず,すぐに外れてしまうこともあったが,やっぱり新品は調子がいい。

*2:もっとも,あまり小さい鋭角にはできない。側面が正三角形の正五角錐を作るのは,底面と側面のなす二面角が小さいのでちょっと無理。

*3:アルキメデス角柱と反角柱も底面が正六角形までのものは作れる。

*4:長辺が底辺の√2倍の二等辺三角形のパネルが48個あるので,これで正八角錐の側面をつくれば正八角形が六つできる。これを使えば正八角形の面が正八角錐状に凹んだ切頂立方体と大斜方立方八面体はなんとかつくれる。切頂十二面体と大斜方二十・十二面体はどうやってもできない。

*5:ということは,各頂点における立体角もすべて等しい。