菱形十二面体のCG


 今まで多面体はポリドロンでつくったものか,そうでなければ手書きの図を掲げていたが,CGを使ってもっときれいに分かりやすくしてみようと思い立つ。フリーウェアの「POV-Ray」を使用した。
 菱形十二面体は,合同な白銀菱形12枚*1からなる多面体である。形の説明として一番分かりやすいのは,立方体の各面に,立方体の半分の高さの正四角錐を貼り付ける,というものだろう。隣同士で四角錐の斜面が面一になるので,構成面は菱形になる。
 菱形十二面体は,頂点座標がちょうど切りのいい値になるし,頂点数は14個,稜数も24本とほどほどなので比較的簡単にCGが作れる。

・菱形十二面体と立方八面体
 菱形十二面体の頂点は,鋭角ばかり集まるものが6個,鈍角ばかり集まるものが8個である。前者は同心に配置した正八面体の頂点と一致し,後者は立方体の頂点と一致する。
 この立方体と正八面体の複合多面体の凸包が菱形十二面体であり,立方体と正八面体の重複部分が立方八面体である。立方八面体は菱形十二面体の双対多面体*2であり,準正多面体*3の一つである。
 立方八面体は,立方体の各頂点を,稜の中点まで切頂したものともいえるし,正八面体の各頂点を,稜の中点まで切頂したものともいえる。正三角形の面を8枚,正方形の面を6枚もつ。



・菱形十二面体と接球
 菱形十二面体は,内接球と稜接球をもつ。多面体の内接球とは,すべての面に接する球,稜接球とは,すべての稜に接する球である。左図が内接球と菱形十二面体,右図が稜接球と菱形十二面体である。
 菱形十二面体が内接球と稜接球をもつことは,その双対である立方八面体が外接球と稜接球をもつことに対応する。外接球はすべての頂点を通る球であり,内接球と外接球は双対関係にあるからだ。
 菱形十二面体は,外接球はもたない。正八面体の頂点にあたる6個の頂点を通る球(左図)と,立方体の頂点にあたる8個の頂点を通る球(右図)が異なる径をもつためである。
 これと対応して,立方八面体は内接球をもたない。立方体の面にあたる正方形の面6枚に接する球と,正八面体の面にあたる正三角形の面8枚に接する球は異なる径をもつ。



・菱形十二面体と斜方立方八面体

 菱形十二面体を切頂していくと,アルキメデス立体*4の一つ,斜方立方八面体(右図)が得られる。鋭角が四つ集まる頂点からの切口は正方形であり,これは菱形十二面体を立方体で切り取ることによって実現できる。また,鈍角が三つ集まる頂点からの切口は正三角形であり,これは菱形十二面体を正八面体で切り取ることによって実現できる。残りの面が正方形になるように立方体と正八面体の大きさを調節すると,斜方立方八面体が得られる。

 青の面が立方体による切口,緑の面が正八面体による切口である。立方体の大きさは,菱形十二面体に内接する立方体の√2倍,正八面体の大きさは,菱形十二面体に内接する正八面体の(4-√2)/2倍である。



・菱形十二面体と大斜方立方八面体

 菱形十二面体をさらに切頂していくと,アルキメデス立体の一つ,大斜方立方八面体(右図)が得られる。鋭角が四つ集まる頂点からの切口は八角形であり,これは菱形十二面体を立方体で切り取った面を,正八面体で切頂することによって実現できる。また,鈍角が三つ集まる頂点からの切口は六角形であり,これは菱形十二面体を正八面体で切り取った面を,立方体で切頂することによって実現できる。立方体と正八面体の大きさは,各切口が正八角形,正六角形になるように,しかも残った菱形十二面体の面が正方形になるように,うまく調節しなくてはならない。
 立方体の大きさは,菱形十二面体に内接する立方体の(10-√2)/7倍,正八面体の大きさは,菱形十二面体に内接する正八面体の(12+3√2)/14倍である。

・その他

 菱形十二面体は,空間を隙間なく充填する。CGでこの様子を表現したものが左図である。
 右図は,菱形十二面体の角度を変えて並べてみたものである。

*1:対角線の比が白銀比,すなわち1:√2の菱形

*2:面と頂点を入れ替えた多面体。稜の数は等しい。多面体のすべての稜を,それと垂直な稜に入れ替えた多面体は,双対多面体である。

*3:二種の正多角形からなり,頂点が合同,稜も合同な多面体。立方八面体と二十十二面体の二つがある。

*4:複数種の正多角形からなり,頂点が合同な多面体。準正多面体を含み,全部で13種ある。