正十二面体と黄金比(その1:面心図から)

・正十二面体の直投影
 先月の記事で,黄金比と正五角形の関係について述べた。その正五角形からなる正多面体である正十二面体も,黄金比と密接な関係がある。今回から三回かけて,正十二面体の直投影を通して,正十二面体と黄金比の関係について触れてみたい。
 多面体の直投影については,前々回ざっと説明したが,大事なことを確認しておく。
 直投影とは,平行光線による,それと垂直なスクリーンへの投影である。よって,多面体上の,スクリーンに平行な多角形や線分は,それと合同な多角形や線分に投影される。多面体上の,互いに平行な線分は,互いに平行な線分に投影され,しかもそれらの線分の長さの比は等しい。つまり平行性と長さの比は保たれる。線分上に内分点があれば,それを直投影しても,内分比は変わらない
 正十二面体は正五角形の面のみで構成されている。よって,正十二面体の直投影は,正五角形を直投影した五角形のみで構成される。一般の配置では,正十二面体の面はスクリーンと平行でないため,直投影の五角形は正五角形ではない。正五角形ではないが,正五角形と同様に黄金比を多くもつ五角形である。

 このことは,直投影が平行線分の長さの比を変えないことからわかる。この五角形の各辺には,それぞれ平行な対角線がある。平行な辺と対角線の長さの比は黄金比\phiである。また,各々の対角線は,他の対角線を黄金分割する。一本の対角線は,五角形の高さを黄金分割し,五角形の面積を黄金二乗分割する。さらに,対角線を引いてできる三角形*1の面積は5種類あり,それらを順に並べると隣合う面積の比は黄金比\phiになっている。

・正十二面体の面心直投影
 正十二面体の対向面の中心をつなぐ直線は,五回対称軸である。すなわち,この軸まわりに,360°/5=72°回転させると正十二面体は回転前と完全に一致する。よって,この軸に平行な光線で直投影をおこなうと,その投影図は五回対称性をもつ。
 中心に一つの正五角形面があり,これはもとの正十二面体の面と合同である。よって正十二面体の稜長を1とすると,投影図の中央の正五角形の辺長も1である。これを下方の図では赤線で示した。

 この正五角形の各頂点から放射状に線分が伸び,それらの先端が少し大きな正五角形(水色)の頂点の位置に来る。そしてここから二本づつ線分が伸びて,投影図の輪郭は正十角形になっている。輪郭が正十角形になる理由は,対称性からというだけで充分であろう。隠線を描けば一目瞭然だ(右図)。



・面心直投影図の寸法
 正十二面体の面心図では,面は中心に1枚,周囲に5枚の計6枚見えている。正十角形の大きさはどれくらいだろうか?これは簡単に求めることができる。先の大きな正五角形に注目すると,これは中心の正五角形と相似比が黄金比\phiになっている。なぜなら,大きな正五角形の辺は,周辺5枚の五角形の対角線であり,この対角線(水色)の長さはこれと平行な辺(赤)の長さの\phi倍だからである。これさえわかれば,作図が可能になる。

 寸法をいくつか求めておこう。まず,AB=1CE=\phi\simeq1.618
OA=\frac{GA}{\sin{\frac{\pi}{5}}}=\frac{\frac{1}{2}}{\sin{\frac{\pi}{5}}}=\frac{1}{\sqrt{3-\phi}}\simeq0.851
OE=OD={\phi}OA=\frac{\phi}{\sqrt{3-\phi}}\simeq1.376
OG=\frac{GA}{\tan{\frac{\pi}{5}}}=\frac{\frac{1}{2}}{\tan{\frac{\pi}{5}}}=\frac{\phi}{2\sqrt{3-\phi}}\simeq0.688
 上2式から,GはODの中点であるから,ABとODはGにおいて互いを垂直二等分する。よって,△AODは底角36°の二等辺三角形。すると,△DAEは△ODEと相似な黄金三角形*2であることがわかり,二等辺三角形であるから,DE=DA=OA。つまり,輪郭の正十角形の辺長は,中央の正五角形の外接円半径と一致する。
 次に黄色の線に着目して,周辺の五角形がどの程度つぶれているかを調べる。
GH=GO+OH=GO+OA=GO+\frac{2}{\phi}GO=(1+2\phi-2)GO=(2\phi-1)GO
GO=GDであったから,中央の正五角形と周辺の五角形は,底辺を共有して高さの比が(2\phi-1):1=約2.236:1になっている。当然,面積比も(2\phi-1):1で,輪郭の正十角形の面積*3は,中央の正五角形の1+\frac{5}{2\phi-1}=2\phi=約3.236倍である。

・二面角の算出
 面心図に現れる二種の五角形の寸法から,正十二面体の二面角δを求めることができる。
 中心の正五角形に投影される面は光線と垂直,スクリーンと平行であり,周辺のつぶれた五角形に投影される面がスクリーンとなす角はδの補角である。そして面がスクリーンとなす角は,その法線が光線となす角と等しく,これをθとすると,その面の直投影はもとの面を一方向にcosθだけ縮小した形になる。そしてすぐ上で見たように,面心図において,つぶれた五角形は正五角形を対称軸の方向に(2\phi-1)分の1に縮小したものであるから,
\cos(\pi-\delta)=2\phi-1=\sqrt{5} であり,これを解くと,二面角δは約116.6°となる。

・正十角形からの作図
 正十二面体の面心直投影は,正十角形から次のようにして簡単に作図できる。

1.正十角形に,頂点を二つおきにつなぐ対角線を描く。対角線は星型正十角形*4になる。
2.対角線の芯にできる正十角形の頂点を一つおきにつないで,正五角形を描く。
3.正五角形の頂点と輪郭の正十角形の頂点を,放射状につなぐ。
4.隠線もまったく同様にして得られる。

*1:一般には合同なものはない

*2:頂角36°の二等辺三角形

*3:正十二面体を直投影したときに,その輪郭が囲む面積のうちで,最も大きいのがこの正十角形の面積と思われるが,あっているだろうか?

*4:正10/3角形