ジョンソン立体の分類

 正多角形だけを面とする凸多面体は,プラトンの立体5種,アルキメデスの立体13種,アルキメデスの角柱と半角柱,そしてジョンソンの立体ですべてである。ジョンソンの立体は92種類もあってとても多いが,いくつかのグループに分けることができ,そうすることで理解がぐっと深まる。

・角錐,台塔,丸塔
 まず,角錐とその一般化としての台塔,丸塔が,計6種類ある。
 角錐は四角錐と五角錐の2種類ある。等稜三角錐は正四面体なのでジョンソンの立体からは除外され,等稜六角錐は平面につぶれるので多面体でない。
 台塔は,底面が頂面の2倍の辺をもち,正方形と正三角形を交互に配置して側面としたものである。頂面の辺の数は3,4,5のどれかで,それぞれ立方八面体,斜方立方八面体,斜方二十・十二面体の一部になっている。底面の辺数で「三角台塔」などと呼ぶ。二角台塔は,(倒した)等稜三角柱である(右写真)が,これは半正多面体であるからジョンソンの立体ではない。六角台塔は,平面につぶれてしまって多面体にならない。

 丸塔は,二十・十二面体を半分に切った形で1種。正五角形6枚と正三角形10枚が規則正しくドーム状に組み合わさっていて,上底面は正五角形,下底面は正十角形である。

 以上,このグループをまとめると次の表になる。ジョンソンの立体には通し番号Jnがつけられている。

J1〜J6 四角錐 五角錐 三角台塔 四角台塔 五角台塔 丸塔

・角錐の変形
 次に角錐の変形が11種ある。
 角錐と角錐を底面で貼り合わせた双角錐が2種ある(等稜双四角錐は正八面体)。なお等稜双三角錐はデルタ六面体,等稜双五角錐はデルタ十面体である。角錐と角柱を底面で貼り合わせた角錐柱が3種。角柱の両底面に角錐を貼り合わせた双角錐柱も3種。角錐と反角柱を底面で貼り合わせた角錐反柱が2種,反角柱の両底面に角錐を貼り合わせた双角錐反柱は双四角錐反柱だけで1種。これはデルタ十六面体である。角錐の面と反角柱の面に角度がつかず,同じ面になってしまうので等稜三角錐反柱や等稜双三角錐反柱は存在できない。等稜双五角錐反柱は正二十面体だ。

J7〜J8 三角錐   双五角錐
J9〜J11 三角錐 四角錐柱 五角錐柱
J12〜J13   四角錐反柱 五角錐反柱
J14〜J16 三角錐 双四角錐柱 双五角錐柱
J17   双四角錐反柱  

・台塔,丸塔の変形
 そして台塔や丸塔の変形が31種。だいぶ多い。台塔や丸塔の底面に角柱や反角柱,台塔や丸塔を貼り付けてできる。頂面にこれらを貼り付けると非凸になってしまうからできないし,底面の辺数は6以上なので角錐,角錐柱,角錐反柱は貼り付けられない。
 角柱や反角柱を貼り合わせたものが計8種類ある。台塔柱が3種,丸塔柱が1種,台塔反柱が3種,丸塔反柱が1種である。二角台塔を除いて,どのパターンもジョンソン立体になるから分かりやすい。二角台塔柱は三角形の面(三角柱の底面)が角柱の側面と同一面となるので不適。二角台塔反柱は非凸になってしまう。
 以下,台塔や丸塔を二つもつものを列挙する。これらの塔二つは,まったく同じもの二つでなければ,五角台塔と丸塔の組み合わせに限る。立体の回転対称性が底面の回転対称性の半分しかないので,(反角柱を挟むものを除いて)ひねって貼り付けると別の多面体になることにも注意が必要だ。ここでは,「双塔」「台塔丸塔」「双塔柱」「台塔丸塔柱」のうち,上下の塔の頂面の角度が異なる方を「反」をつけて呼ぶこととする。

 台塔+台塔の双台塔が6種。双二角台塔の一つ(右写真)は,等稜三角柱を二つ,一方を立て,他方を倒して側面同士で貼り合わせた形で,これに該当するが,もう一つは三角柱の底面が同一平面上にくるので不適。双三角台塔の一つは,立方八面体そのものなので除外。双四角台塔,双五角台塔はそれぞれ2種。
 同様に,台塔+角柱+台塔の双台塔柱は,計5種。双四角台塔柱の一方はミラーの立体だが,他方は斜方立方八面体(アルキメデスの立体)なので除外。
 台塔+反角柱+台塔の双台塔反柱は,計3種双丸塔が1種(一つは二十・十二面体),双丸塔柱が2種双丸塔反柱が1種台塔丸塔台塔丸塔柱台塔丸塔反柱がそれぞれ2,2,1種。なお,二つの塔で反柱を挟んだ双塔反柱5種は,キラルな多面体になっている。非鏡映対称で,ひねり型が自身の鏡像になる,いわば光学異性体である。ねじれ型のアルキメデス立体と同様,これらの光学異性体は別種とはカウントしない。

J18〜J21 三角台塔柱 四角台塔柱 五角台塔柱   丸塔柱
J22〜J25 三角台塔反柱 四角台塔反柱 五角台塔反柱   丸塔反柱
J26〜J34
双二角反台塔
双三角台塔
 
双四角台塔
双四角反台塔
双五角台塔
双五角反台塔
台塔丸塔
反台塔丸塔
双丸塔
 
J35〜J43   双三角台塔柱
双三角反台塔柱

双四角反台塔柱
双五角台塔柱
双五角反台塔柱
台塔丸塔柱
反台塔丸塔柱
双丸塔柱
双反丸塔柱
J44〜J48 双三角台塔反柱 双四角台塔反柱 双五角台塔反柱 台塔丸塔反柱 双丸塔反柱

 下の写真は左から順に,台塔丸塔,反台塔丸塔,台塔丸塔反柱である。

・側錐角柱
 角柱自体は半正多面体なのでジョンソンの立体ではないが,角柱の側面に角錐を貼り合わせたもの9種はジョンソンの立体になる。角錐底面の辺数が7以上だと非凸になり,4以上だと隣接する側面に角錐を貼ると非凸になる。また,四角柱の対向二面に角錐を貼ると双四角錐柱になり前出(J15)。よって,このグループの角錐底面辺数は3,5,6に限られ,それぞれ3,2,4種ある。六角柱の二つの側面に四角錐を貼る場合,対向面に貼るのと一つおきの面に貼るので異なる立体ができる。角錐を貼り付けるとき,前者のようなパラな貼り方を「双側錐」,後者のようなメタな貼り方を「二側錐」と呼ぶことにする。三側錐三角柱はデルタ十四面体である。

J49〜J51 側錐三角柱   二側錐三角柱 三側錐三角柱
J52〜J53 側錐五角柱   二側錐五角柱
J54〜J57 側錐六角柱 双側錐六角柱 二側錐六角柱 三側錐六角柱

プラトン立体の変形
 さらに正多面体の変形が7種ある。正十二面体に五角錐を貼り合わせたものが4種。非凸になるので隣接面には貼れないことを考えると,五角錐の数1,2,3に応じて1,2,1種であることが分かる。そして正二十面体から五角錐を除いたものとその変形が計3種。1つ除くのは五角錐反柱で前出だし,4つ以上は除けない。2つ除くのと3つ除くのが1種づつあるが,3つ除いたものは一つの面に三角錐をつけても凸となる。

J58〜J61 側錐十二面体 双側錐十二面体 二側錐十二面体 三側錐十二面体
J62〜J64     二欠錐二十面体 三欠錐二十面体 側錐三欠錐二十面体

アルキメデス立体の変形
 これは計19種あるが,もとになるアルキメデスの立体は,切頂多面体と斜方二十・十二面体に限られる。切頂多面体に台塔を貼り合わせたもの7種と,斜方二十・十二面体の五角台塔を回転したり除いたりしたもの12種
 前者のベースは,切頂四面体,切頂立方体,切頂十二面体だけで,それぞれ1,2,4種得られる。それ以外の切頂多面体+台塔や,切頂十二面体+丸塔は非凸である。切頂多面体の三角形と台塔の三角形が隣接すると,角度がつかずに菱形の同一面になるので,ひねりによる異性体の一方のみがジョンソン立体になる。複数の台塔を貼ってもよいが,隣接面に貼ると非凸になる。よって,切頂四面体,切頂立方体,切頂十二面体に台塔はそれぞれ最大1,2,3個しか貼れない。切頂十二面体では,二つの台塔を貼る位置の違うパラとメタの異性体があるが,三つの台塔をもつものは1種に決まる。
 斜方二十・十二面体ベースのものは複雑だが,台塔を1,2,3箇所ひねったものがそれぞれ1,2,1種,台塔を1,2,3箇所除いたものもそれぞれ1,2,1種,台塔のひねりと除去を組み合わせたものが4種(1ひねり1除去,1ひねり2除去,2ひねり1除去,がそれぞれ2,1,1種)ある。どれも2箇所を変形するもののみメタ,パラ2種の異性体がある。

J65 側塔切頂四面体
J66〜J67 側塔切頂立方体 双側塔切頂立方体
J68〜J71 側塔切頂十二面体 双側塔切頂十二面体 二側塔切頂十二面体 三側塔切頂十二面体
J72〜J75 反塔斜方二十・十二面体 双反塔斜方二十・十二面体 二反塔斜方二十・十二面体 三反塔斜方二十・十二面体
J76,J80,J81,J83 欠塔斜方二十・十二面体 双欠塔斜方二十・十二面体 二欠塔斜方二十・十二面体 三欠塔斜方二十・十二面体
J77,J78,J79,J82 パラ反欠塔斜方二十・十二面体 メタ反欠塔斜方二十・十二面体 二反欠塔斜方二十・十二面体 反二欠塔斜方二十・十二面体

・その他
 残りの9種は分類しにくく,発見も難しかった。よく知られた多面体からの,系統だった分析ができないのである。その分思いもよらない形が多く,これが正多角形だけからなるとは…,と感心してしまう。ジョンソンはよく数え落とさなかったものだ

J84〜J87 変形双五角錐 変形四角反柱 球形屋根 側錐球形屋根

J88〜J90 長球形屋根 広底長球形屋根 五角錐球形屋根

J91〜J92 双三日月双丸塔 三角広底球形屋根丸塔


 変形双五角錐はデルタ十二面体である。続く6個はすべて正三角形と正方形だけからなり,残りの2つは,正五角形や正六角形をもっている。
 ジョンソン立体の中でも,最後のJ91とJ92は,特に魅力的な形をしている。

・まとめ
 結局,正多角形のみを面とする凸多角形は,無限系列の角柱,反角柱を除けば,プラトンの立体,アルキメデスの立体,ジョンソンの立体を合わせて計110種類である。これらの整凸多面体には,面として6種類の正多角形しか出現しない。すなわち正三角形,正方形,正五角形,正六角形,正八角形,正十角形である。だからポリドロンでこれらの正多角形をそろえれば,110種類の全部がつくれる。
 ジョンソンの立体のうちで,外接球をもつものは,プラトンの立体の一部になっているものと,アルキメデスの立体の一部をなくしたり回転したりしたものである。角錐,台塔,丸塔のすべてと,五角錐反柱,四角台塔柱,双三角台塔,双丸塔,双四角反台塔柱(ミラーの立体),二欠錐二十面体,三欠錐二十面体,及び斜方二十・十二面体の変形すべてであり,全部で25種ある。これらは稜接球ももち,稜接球との接点が各稜を二等分する。